第2閉塞 8030は赤い糸

3/4
前へ
/295ページ
次へ
「あっ、あ……ごめんなさいです」 扉の側に立っていた女の子にぶつかってしまった。 「あっ、こっちこそごめん」 同い年にしては、ちょっと小さいかな? 『…出町柳行き発車します…』 慌て、僕は少し奥に詰める。でないと、ドアに鞄が接触するから。 「あっ!どこかでみたことあるなぁ、って思ったら………」 首をかしげていた少女が、ポンと手を打つ。 そう言えば、「~です」って語尾、今日どっかで聞いたような……。 「朝、阪急京都線の河原町9時着の特急の先頭車でおばあさんに座席を譲った人です。違いますか?」 ………すごい。よく覚えてる。そして………。 「うん………そうだけど………」 「やっぱりですぅ♪」 ………タラちゃん口調? 「あと、今日ずっとこの8030系追いかけてるです」 「………当たってる」 何、まさかつけられてる? 「私も、この8030系にずっと付きっきりなのです」 へ? まさかの同業者? 「あっ、私の名前は松谷三咲です」 え?自己紹介? でも、されたからにはこっちもしなきゃいけないかな……… ………照れる……… 「あ…えー、僕は小松崎達哉です」 「……何年生ですか?きっと先輩だと思うです」 「え?中学3年だけど……?」 「じゃあ、同い年だったのですぅ💦」 ごめんなさい、年下だと思ってました。 は、口には出さない。 『次は七条、七条』 その車内放送でふと気づく。 「あっ、収録……」 「達哉くんは音鉄なのですか?」 「いや……全部かな?」 「あっ!邪魔してしまったです……」 「え?!……大丈夫、七条出発からだから!」 本当は嘘なんだけど、しょんぼりする三咲ちゃんを見ていると、そんな言葉が口に出た。 そりゃ、三咲ちゃんを見れば、誰だってそう思ってしまう。 だって、かわいいから。自然体全開なのに。
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加