-転- ボクは何者に“成るべき”なの?

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癒奈の部屋に飛び込んだ時、まず目に入ったのは、へたれ込んだ千好の姿だった。 折角綺麗に整えた口紅が滲んでいるぜ。 まるで血を吸った後の吸血鬼みたいだ。 次に目撃したのは、妄言を唱える癒奈のざらついた首筋だった。 懐から取り出したナイフの先が、浮き上がった血管に接触している。 また癒奈が恍惚剤を過剰摂取したのだと、俺は推測した。 だがそれは間違いだった。 何者かが癒奈に憑依しているようなのだ。 「お前は本当にバイタリヲンなのか?」 「その通り。汝の右手、そして神偶千好の左手に能力を分け与えはこの我である。どうやらまだ上手く使いこなせていないようだな」 白目を向く癒奈。 「我はほんの遊び心で木の上に暮らす獣を大地へ導き、知恵を与えてみた。まさか<世界>を巻き込んだ争いを三度も行い、果ては<世界>を滅ぼすような愚かな動物に成長とは……」 はっと我に返る千好。 「<世界>は本当に滅びたの? ドームの外側には何もないの?」 「それは教えられぬ。自分の目で確かめてみると良い。それでは我は戻るとしよう……」 癒奈が口から泡を吹いたので、途中からバイタリヲンの言葉は聞き取れなかった。
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