-転- ボクは何者に“成るべき”なの?

19/47
前へ
/192ページ
次へ
癒奈は目覚めない。 目覚めないまま、五日が経過した。 「お主は診療所へ行かないのかね?」 あれからボクは一度も癒奈の様子を見に行っていない。 「怖いんじゃな」 「ち、違うよ。そんなことより、早く訓練の続きを始めようよ。ボクが能力を取り戻した時の為に」 「それもそうじゃのう」 あの日以来、ボクの左手に宿る力は発動しなくなった。 バイタリヲンはボクに何をしたんだろう? 「人間のAT細胞を何に分化させるのか。そのパターンを多くする為には、お主の知識と想像力を肥やさなければならん。今日は、第三次<世界>大戦で使用されていた兵器の仕組みから紹介しようかのう」 恩字はボクに能力を取り戻して欲しいようだ。 必要とされているのはボク自身ではなく、ボクの能力だったのだ。 ボクはまた役立たずに戻ってしまったよ。 でもいいんだ。 あんな能力、ボクには荷が重すぎた。 返ってせいせいしたよ。 恩字は躍起になってるみたいだけどね。 本人のボクは力を取り戻したいと思ってるふりをしているだけで、本当はやる気ゼロなんだ。 適当に恩字に合わせておけばいいや。 ボクは気楽に考えていた。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加