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癒奈は目覚めない。
目覚めないまま、五日が経過した。
「お主は診療所へ行かないのかね?」
あれからボクは一度も癒奈の様子を見に行っていない。
「怖いんじゃな」
「ち、違うよ。そんなことより、早く訓練の続きを始めようよ。ボクが能力を取り戻した時の為に」
「それもそうじゃのう」
あの日以来、ボクの左手に宿る力は発動しなくなった。
バイタリヲンはボクに何をしたんだろう?
「人間のAT細胞を何に分化させるのか。そのパターンを多くする為には、お主の知識と想像力を肥やさなければならん。今日は、第三次<世界>大戦で使用されていた兵器の仕組みから紹介しようかのう」
恩字はボクに能力を取り戻して欲しいようだ。
必要とされているのはボク自身ではなく、ボクの能力だったのだ。
ボクはまた役立たずに戻ってしまったよ。
でもいいんだ。
あんな能力、ボクには荷が重すぎた。
返ってせいせいしたよ。
恩字は躍起になってるみたいだけどね。
本人のボクは力を取り戻したいと思ってるふりをしているだけで、本当はやる気ゼロなんだ。
適当に恩字に合わせておけばいいや。
ボクは気楽に考えていた。
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