-転- ボクは何者に“成るべき”なの?

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「お前達、凄まじいすれ違いっぷりだな。俺の恋愛を手伝うよりも先に、お前が癒奈に告白しておけば良かったんだ。そうすればお前はもっと早く俺達と共に歩んでいたはずだぜ。いや、きっとお前がリーダーになっていただろうな」 ボクが<不良>を束ねるリーダーだなんて。 切矢の夢想にはついて行けないや。 「当時の千好は格好良かった。強くて、頼り甲斐があって、どんな時でも前に飛び出すあの姿に、俺はずっと憧れていたんだぜ」 「違うよ。本当に強いのは切矢のほうだよ。あの日のトラウマを乗り越えて、ボクが見てない間も努力してきたんでしょ」 「俺はただ、強がっていただけなんだ。昔から何も変わっちゃいなかった。最近、お前といて実感したぜ。仲間の前では堂々と振る舞っているが、実際は小心者なんだ」 七年ぶりの再開を果たしてから、初めて聞く切矢の本音。 「なあ千好。俺にもしものことがあれば、お前が俺の代わりにみんなをまとめてくれないか?」 「やめてよ、ボクには無理だよ。能力だって失ったのに」 「バイタリヲンが何を考えているかは知らないが、お前は必ず能力を取り戻すはずだ。頼む千好!」 懇願する切矢。 「切矢に何かあったときだなんて、縁起の悪いことを言わないでよ」 「もしもの話だぜ」 ボクは、断り切れなかった。
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