-転- ボクは何者に“成るべき”なの?

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  切矢はボクを守ってくれた。 本当ならボクは騎士団から落とされるはずなのに、切矢は団員を説得してくれたんだ。 ……それがお節介なんだよね。 もうボクのことは放っておいてよ。 絡んで来ないでよ。 一人にさせてよ。 ボクはもう切矢の武器にはなれないんだ。 期待に応えられないんだ。 だからもう、役立たずなボクを見捨てて欲しいんだ。 そうしたら気が楽になる。 切矢の代わりにリーダーになるなんて、ボクには無理だよ。 お願いだから、ボクに期待しすぎないで……。 それなのに切矢は、ボクに全てを晒したんだ。 自分の弱さを。 本音を。 仲間の前では堂々と格好良く振る舞ってる切矢だけど、弱味だってあるんだ。 だって切矢も人間だもんね。 それをボクなんかが垣間見ちゃって良かったのかな。 後を継ぐつもりもないのに。 でも、ちょっと安心しちゃったんだ。 切矢にだって弱味がある。 最低人間のボクにも希望が見えたんだ。 人の弱味を見て安心するなんて、やっぱりボクは最低人間なのかな。 そんな折り、涙深がやって来たんだ。 癒奈が目覚めたらしい。 ボクはまだ涙深の言うことを信じられなかった。 涙深の言うことをなんてボクは聞いてやらないもんねーだ。 後で向かうと返事して、涙深を部屋から追い出した。
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