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「汝は能力を失ったのではない。汝がそう思い込んでいるだけなのだ」
「そんなこと言ったって、実際ボクはもう能力を使えないんだよ。仮に能力を失ってなかったとしても、使う気もないけどね」
ボクは人面瘡に話しかける。
バイタリヲンが人面瘡に居候してることを知らない人が見たら、ボクはブツブツ独り言を唱えてるように映るのかな。
気持ち悪っ。
「そう顔をしかめるでない。灰鶴癒奈は我の能力の仲介者である。彼女のAT細胞は今も活性化している。汝が真に望む時、能力は再び覚醒するであろう、以前より更に強くなりて」
「真に望む時なんてないよ。それに、強くなんてなりたくないね。嫌な思いをするだけだもん」
ボクは下を向いた。
「やれやれ、汝は誠に後ろ向きな性格であるな」
「バイタリヲンはどうしてボクなんかを選んだのさ。人選ミスじゃないの?」
「それはまだ分からん。未来だけは我にも見えんのでな。我は飽きたのだよ、我が産み出した生命を設計通りに操ることに。だから我は、人間に自由意思を与えてみた。いちいち我が指示をするのも疲れた」
「だってもう、お爺さんだもんね」
「そうかも知れんな」
老獪なる創造主は、人面瘡の口を結んだ。
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