-承- ボクは何者に“成ればいい”の?

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十月二十日、日曜日。 御霊グループに多大なる貢献を果たした仔飼涙深。 その功績により、今日の団員会議で涙深は円卓の騎士の九人目に加えられることが決定してしまった。 たった一週間で異例の昇格。 それが以外とよくあるのだから困りものだ。 ボクの場合は、切矢のグループに加わったその日に円卓の騎士入りを果たしていた。 それこそ異例中の異例だ……と思っていたらどうやら命泉誘音も一日で円卓の騎士に加わったらしい。 「それにしても、こんなの変だよ。おかしいよ」 ボクは反抗期の子供のように物に当たり散らす。 「涙深が円卓の騎士に加わるだなんて、ボクは認めないぞ!」 薄暗い部屋で一人で暴れるボク。 ぜいぜいと息を切らした。 「神偶千好君、ご乱心の様子ですがどうされました?」 忌々しい人物の声。 「入ってもいいですか?」 「勝手にどうぞ」 ボクの虚ろな瞳に、一筋の光が飛び込んでくる。 「実は、千好君に伝えておきたいことがあるのです」 涙深がボクに伝えたいこと? 検討もつかない。 「どうせまた、ボクを騙すつもりなんだろう?」 「やれやれ、疑心暗鬼ですか。私はもう何もしませんよ。千好君、あなたはそうやって苦手な人、嫌いな人を増やしていくのですね」 涙深は、騙されたから嫌い。 断はボクのことが気に食わないから、ボクも嫌い。 癒奈は、昔は好きだったけど今は嫌い。 切矢も、やり方に疑問があるから嫌い。 亞六は、クラスメイトだった頃から嫌い。 恩字も不気味だから嫌い……。 「うるさい、涙深には関係のないことだ!」 でもボクは、涙深の言うことを否定出来なかった。
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