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「癒奈ちゃんが言っていましたよ。千好は最低だ、と」
「ふうん、それがどうしたっていうんだよ。ボクには関係のないことさ」
「昔の格好良かった千好はどこに行ったのかと、嘆いていますよ」
「関係ないって言ってるでしょ!」
ボクは目の前にあった枕を涙深に投げつけた。
「やはりお子様ですね」
「ボクに何を言っても無駄だ」
「変わり果てた癒奈ちゃんのことが嫌いになったのなら、自分の力で説得して、強引にでも恍惚剤をやめさせるべきではないのですか!」
涙深は枕を投げ返した。
「涙深はどうしてそこまで癒奈にこだわるんだよ?」
「……どうやら私は切矢君の予想に反したようなのです」
嘘だ!
これは涙深の演技に違いない。
「私だって人間です。損得だけでは計算し切れませんよ」
何が目的だ?
狙いはなんだ?
「私は……癒奈ちゃんを好きになってしまったのです」
分からないぞ。
ボクは涙深が分からない。
「今のままの、ありのままの癒奈ちゃんが好きなのです。恍惚剤を飲んでいようが関係ありません」
切矢と組んでいるのかな?
ボクに何をさせる気だ!
「千好君が、昔の癒奈のほうが好きだったというのなら、恍惚剤をやめさせてみせるといい。ボクはとめませんよ。まあ、今の千好君には出来ないでしょうが」
「もう癒奈の話はやめてよ! ボクのことは放っといてくれないか」
「そうですか。それはそれで、ライバルが減って安心しましたよ。では、失礼」
涙深は一礼してボクの部屋から去っていく。
散らかった部屋が静かになった。
ええい、むしゃくしゃする。
ふて寝しちゃえ。
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