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決闘は一時間後だ。
どうしよう。
何かいい方法でもないかな?
ボクはその辺をクマのようにグルグル回りながら考えたり、悩んだり迷ったり焦ったりして時間を浪費していた。
円卓の騎士団一の剣豪と千好が決闘する。
それを聞きつけた野次馬が、さっそく倉庫に集まりだしている。
ああ、どうしよう。
自信ないなあ……。
よし、一旦部屋に戻って女装して来よう。
いやいや、駄目だ駄目だ早まるなボク。
グルグル回る方向が逆転する。
そうだ、蔀をスパイして作戦を聞き出してみよう。
この際、卑怯者と呼ばれても構わない。
元々ボクはそういう人間なんだ。
蔀の刀への恐怖心に負けてしまった。
扉越しに、蔀の話し声に耳を澄ます。
そこから聞こえて来たのは……。
「今日は機嫌斜めなのね。千好さんとの決闘が始まるまでには、気分を入れ換えておいてね。私も、あなたの為に真剣に戦うから」
蔀の独り言?
いや、刀と話しているようだ。
変な人だな。
何かの修行かな?
「おや、千好ではないか。そこで何をしているんだ?」
突然肩に触れられる。
ボクは体をびくりと飛び上がらせ、ぎこちない動きで振り返った。
「なんだ、切矢か。驚かさないでよ。ボクは別に、何もしてないよ。本当だよ」
「そうなのか。俺は戦う相手の情報を事前に調べておくのも、悪くない手だと思っているぜ」
「そうだよね、そうなんだよ切矢」
慌てて切矢に同意する。
「ところで千好。お前に忠告しておきたいことがあるんだ」
「なんだよ?」
ボクは切矢の話に耳を傾けた。
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