-転- ボクは何者に“成るべき”なの?

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野次馬からの大歓声。 ボクはにやついた顔で周囲を見渡した。 「おっほん、この決闘の勝者は神偶千好じゃ」 「よくやったぞ、千好。さすが俺が見込んだだけのことはあるぜ」 「うちでも倒せなかった蔀に勝つなんて、信じられないにゃん」 「最初は逃げ回ってばかりだったのに、やるじゃねえか千好。うおー、オレも血がたぎって来たぜ!」 「千好殿は自分の意思で立ち向かったのでありますか。それならば……認めるしかないですな」 そんなに見ないで。 ニヤニヤが止まらなくなっちゃうよ。 「千好さん、あなたが立ち向かって来なければ私の勝ちだったわ。でも、あなたは最後に恐怖を振り払って刀を追いかけた」 「でも、半分無意識でした。切矢の言葉を思い出したんです」 「勝利を掴んだのはあなたですよ。謙遜することはないわ」 ボクは蔀と右手で握手を交わした。 たこだらけでごつごつした手。 間違いなく、剣士の手だ。 蔀は恥ずかしそうにサングラスのずれを直す。 「<不良>になったばかりの私は、ただ刀を振り回すだけのお馬鹿さんでした」 「へえ、蔀さんにもそんな時代があったんだ」 「当時、射澄は獣の姿に成って暴れ回っていました。それで気がつけば、刀を振り回して射澄と戦っている私がいた。射澄を止めたかったわけじゃない。ただ、戦う相手を探していただけだったのです。怒りをぶつける対象が欲しかったのです」 暴れん坊時代の蔀と会わなくてよかった。 「私達を抱き止めてくれたのは、切矢でした」 二人を落ち着かせた切矢は凄いよ。 「使えるものはなんでも使う。それが御霊切矢という男。私も射澄も、みんなまとめて御霊グループに加えたのですよ。ぶっ飛んでいますよね」 「それは蔀さんも同じですよ」 円卓の騎士のメンバーは一筋縄ではいかない人ばかりだ。 「千好さん、これからも宜しくお願いします」 「こちらこそ、宜しくお願いします」
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