-転- ボクは何者に“成るべき”なの?

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ボクはうきうきした気分で自分の部屋へと帰った。 「さてさて、今日の訓練も終わったし、女装タイムに入ろうかな」 鏡に向かって可愛いポーズを決める。 女装完了まで約三十分。 変身したボクの姿は誰にも見せるられないなあ。 部屋で一人で楽しもう。 女の子用の服に着替えるボク。 七年前の女子トイレでの出来事を思い出す。 癒奈……。 いいや、癒奈のことは忘れたんだ。 何を考えてるんだよ。 ボク達はもう元には戻れない。 仕方がないことなんだ。 ボクは鏡に映る自分の顔を眺めた。 変身途中のボクの顔。 ボクの左手には触れた人間を変身させる能力が備わっているらしい。 けれど、ボク自身はAT細胞の活性化率がゼロだから何にも成れない。 昔からそうだった。 ボクはずっと“役立たず”と呼ばれ続けて来た。 女装癖の元凶を作ったのは癒奈だけど、何にも成れないボクの変身願望も含まれているのかもしれない。 なんて自己分析してみた。 よし、メイク完了。 その場でぐるりと一周回る。 左手でピース。 うーん、なんだかいつもと違うような。 人面瘡が膨らんでいる気がする。 さっき能力を使ったからかな? あれれ、今、人面瘡の口が動いた? 気のせいだよね……。
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