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「まだ我を疑うか。愚か者め。ならば我の力を見せてやろうぞ」
人面瘡が膨張する。
「な、何をする気だ」
ボクは右手で人面瘡を押さえつけた。
「無駄だと言っておろうが」
人面瘡の口から赤色の気体が飛び出す。
「汝の手など簡単にすり抜けられるわ」
霊魂のような浮遊物質。
これがバイタリヲンとかいう奴の本体か。
「こんなのが十七年間もボクの中に隠れていたなんて」
「おぞましいか? ちなみに、汝が能力に覚醒してすぐの間は、我が意識を操って感覚を覚えさせてやっていたのだ。気がつかなかったであろう」
ボクはこいつに乗っ取られていたのか。
「ボ、ボクの体から出ていくんだ!」
「よかろう。ならば別の器を探すまでだ」
赤く光る霊魂は、部屋の扉をすり抜ける。
「待って。どこへ行く気だよ?」
「汝が最も大切にしている者の所へだ」
「まさか……」
ボクは扉を勢いよく開放し、謎の発光気体を追いかけた。
「逃がさないぞ、バイタリヲン。一体、何を企んでるんだ!」
ボクは大声を上げながら、ハイヒールで廊下を全力疾走した。
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