-転- ボクは何者に“成るべき”なの?

13/47
前へ
/192ページ
次へ
「まだ我を疑うか。愚か者め。ならば我の力を見せてやろうぞ」 人面瘡が膨張する。 「な、何をする気だ」 ボクは右手で人面瘡を押さえつけた。 「無駄だと言っておろうが」 人面瘡の口から赤色の気体が飛び出す。 「汝の手など簡単にすり抜けられるわ」 霊魂のような浮遊物質。 これがバイタリヲンとかいう奴の本体か。 「こんなのが十七年間もボクの中に隠れていたなんて」 「おぞましいか? ちなみに、汝が能力に覚醒してすぐの間は、我が意識を操って感覚を覚えさせてやっていたのだ。気がつかなかったであろう」 ボクはこいつに乗っ取られていたのか。 「ボ、ボクの体から出ていくんだ!」 「よかろう。ならば別の器を探すまでだ」 赤く光る霊魂は、部屋の扉をすり抜ける。 「待って。どこへ行く気だよ?」 「汝が最も大切にしている者の所へだ」 「まさか……」 ボクは扉を勢いよく開放し、謎の発光気体を追いかけた。 「逃がさないぞ、バイタリヲン。一体、何を企んでるんだ!」 ボクは大声を上げながら、ハイヒールで廊下を全力疾走した。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加