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俺と恩字は話しながら廊下を歩いていた。
「なあ恩字、誘音のテリトリーを侵害したのは、さすがにやり過ぎだったのではないか?」
「心配するでない。革命を成功させるには、“駝宮(だみや)の丘”を制する他に方法はないのじゃ。お主の決断は間違ってはおらん」
「俺は団員からの信用を失ってしまった。次は自分のテリトリーが取り潰されるのでは、と疑心暗鬼になっているぜ。涙深が急速に功績を上げて、テリトリー拡大を申請してきたのも気になる。奴はまだ完全に信用されていないから、疑惑、嫉妬、悪意の的にされているようだ」
「心配は無用じゃ。お主は考え過ぎなんじゃよ。団員や傘下の者の前では気高く堂々と振る舞っておれば良い」
含み笑いを浮かべる恩字。
「ありがとう。いつも済まないな」
「いえいえ、とんでもないわい」
話の途中で、断が走り寄ってきた。
「切矢殿! 千好殿が女装した姿で駆け回っております。千好殿の女装癖は傘下の者達に知られても良いのでありますか?」
円卓の騎士の怪物、射澄と蔀を倒したことで、千好は御霊グループのメンバーから認められつつある。
女装癖を晒せば、イメージダウンに繋がってしまう。
千好には、ゆくゆくは俺の代わりにグループを引き継いでもらうつもりだ。
このままでは、折角築き上げた千好像が台無しになってしまう。
「……仕方がない。好きにさせておけ」
俺は淡々と答えた。
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