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「逃がさないぞ、バイタリヲン。一体、何を企んでるんだ?」
千好の叫び声とハイヒールの音が、廊下全体にこだまする。
「おや、千好じゃねえか。でもその格好は……」
命泉誘音(めいせん いざね)は言葉を詰まらせる。
「円卓の騎士のメンバーは変人ぞろいだけど、千好だけは違うと信じていたにゃん。それがまさか、千好にこんな趣味があったにゃんて……」
頭から生えた三角耳を伏せ、口元を押さえる四門射澄(しもん いすみ)。
女装した千好の姿を目撃したのは、円卓の騎士のメンバーだけではなかった。
御霊グループの<不良>の中にも目撃者は沢山いる。
噂は二、三日でテリトリー全体に知れ渡るだろう。
「千好、お前は最高に勇敢な奴だぜ。別の意味でな」
俺は深く深く溜め息をついた。
「それにしても、千好殿は何を追いかけていたのでありましょう?」
「わしも気になるわい」
「よし、追いかけるぞ」
こうして俺は、断と恩字を率いて千好の足音をたどって廊下を進んだ。
千好の向かう先には、癒奈の部屋が。
どうしたというのだ、千好。
「待て、千好!」
後ろ姿の女装少年を呼び止めようとする。
だが、その声は聞き入れられず。
癒奈の部屋の扉が開かれる。
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