★水の杜★

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  小さくなって怯える唄い達の姿に、同情した青。 しかしそれでは自分たちの立場も危ういともっともな意見を述べる九重。 「とにかく反対です。今すぐに知らせを出します。」 「待て、オレの話を聞け。」 「自己中心的極まりないあなたの話を聞く耳は持ちません。」 語気荒く言い争う二人に、屋敷の空気は凍り付いていた。 床に伏した唄い達も己の身の行く末を握る龍王達の意見が分かれていることに涙をこぼす。 『青薊(アオアザミ)、九重。元気そうでなによりじゃの。』 だが、少女の声がその場に決着をつけた。 『主が戻ったというに、出迎えも無しとは。』 バチンと音がして天鵬の骨から作られた扇が閉じられる。 現れたのは錦の帯を締め、銀の天冠を頂いたこの城の主[玉竜公]であった。  
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