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『美依ー。帰るぞー』
階下から聞こえてきたのはオッチャンの声。美依は慌てて俺から降り、ドアへと向かう。
「――私、諦める気ないからね」
ドアの前で一瞬立ち止まり、此方を見ることなくそう告げるとそのまま部屋を出ていった。
情けない話だけど、俺は美依の後ろ姿を眺めるしか出来なかった。
『ごめーん。急にお腹痛くなっちゃったから、もうちょっと待っててー』
ドアの外から聞こえるやりとり。どうやら美依は二階のトイレに入ったようだ。オッチャンたちの「大丈夫か?」という声がする。
俺は両腕で顔を隠し、大きく息を吐き出した。
正に晴天の霹靂という言葉がピッタリだ。美依が俺にそんな感情を持っているだなんて考えもしなかった。先ほどの行動を思い出し、熱が顔に集まる。それと同時に胸が痛む。
「――初めて見たな、美依の泣き顔」
驚いてドアを見ると、いつの間にか空真の姿があった。
「――ノックぐらいしろよな」
どういう態度をとったらいいか分からず、ぶっきらぼうにそう告げる。
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