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美依が生まれてからの付き合いだけど、空真の言う通り、涙を流したのを見たのは初めてだ。あっ、勿論赤ん坊の時なんかは除いてだけど。
美依は泣くよりは怒るって感じの子。小さい頃悪いことをして怒られても、泣くのを堪えて睨みつけながら謝っていた。昔、『涙を見せるのは恥ずかしい!』って言っていたな。
だからそんな美依の流した涙だからこそ、やけに気になって……。
「で、兄ちゃんはちゃんと美依の想いに答えたの?」
全て知っていますよと言わんばかりのしたり顔が、やけに腹立たしい。
「……空真は知ってたのか?」
「ん、まあね。――その様子だと何も言ってない感じかな?兄ちゃんは取り敢えず置いといて、先に美依に助け船を出してやろうかね。俺が帰ってくるまでしっかり悩んでおけな」
そう言うと空真はひらひらと手を振りながら部屋を出ていった。『助け船』という言葉の意味は直ぐに分かった。
『オッチャーン。先に帰ってていいよー。今から彼女が車で来るから、ドライブがてら送って行くから』
「!?……今度の彼女はどんだけ年上なんだよ」
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