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悠ちゃんに宣戦布告とも言える言葉を残しトイレへと入った後、私は必死で涙を堪えていた。
流した涙は一滴。だけど涙は目に溜まっていて、直ぐに何かあったと分かるほど。こんな顔を他の人に見せるわけにはいかないと、ハンカチで目尻を押さえ、気持ちを落ち着けようとしている時だった。
『美依。もう少ししたら俺の彼女が来るから、その車に乗って帰れよ。話も聞いてやれるし、時間も少しできるだろ?』
空ちゃんとは、部屋を出た時に一瞬顔を合わせただけ。それなのにちゃんと気付くところが流石というか……って、今度の彼女は車持ちなの!?
「――ありがとう空ちゃん。ビックリして涙引っ込んじゃったよ」
『どういたしまして』
両親には空ちゃんが話をしてくれたようだったから、私はゆっくり落ち着くことができた。
――泣くつもりも、まして告白する気も全く無かった。だって私は悠ちゃんにとって恋愛対象にないって分かってたから。
ただ――ムカついたんだよね。自分が落ち込んでる時にも、『良いお兄ちゃん』でいる悠ちゃんが。
それが悠ちゃんの良いトコロなんだろうけどね。
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