第2章

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魔王「気をつけなさい、って言われてたのに……グスン」 旅立ち前の事を思い出しながら、無一文かつ荷物を無くし魔王は雨空を見上げ呟いた。 姫勇者と別れて二日後のこと、魔王は一人の商人と出会った。 その商人に言葉巧みに騙されてしまい、姫勇者が魔王に渡した路銀から荷物まで全てを盗られ、魔王まで売られそうになったのを必死に逃げてきた。 そして、今に至る。 魔王「ぐすっ……やっぱり人間は怖い奴らだ……あんなに優しかったのに、いきなり……うぐっ」 最初は優しく何かと気遣ってくれた商人、しかし……ひと気の無い廃屋に着くやいきなり魔王から路銀から荷物まで奪い、あまつさえ魔王の身まで汚そうとしてきた。 ますます、魔王は人間という生き物が怖くなり嫌いになった。 魔王「ハァ……寒い、お腹減った……グスン」 寒さと空腹で魔王は心細くなり、知らないうちに涙が頬を流れていた。 魔王「もぅ……やだ……城に帰りたいよぉ……」 身を打つ雨さえもが、魔王をバカにしあざ笑っているようにすら思えてならなかった。 俯き体育座りをしていると、不意に誰かが魔王の前に来ているのに気づいた。 魔王「っ!?」 魔王は咄嗟にあの商人かと思い、後ろに飛び退こうとしたが、体育座りをしていたせいと慌てたせいで後転返りのように後ろに転んでしまった。
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