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結局、少女と魔王は互いに泣きそうになってしまい気不味い雰囲気を漂わせながらも二人一緒に廃屋で雨宿りすることになった。
少女「どうして、わかったん、です、か?」
しばしの重い沈黙と雨音の後、少女がポツリと口を開いた。
魔王「え?」
いきなりで何のことを聞かれているのか魔王は解らず、対応に困ってしまった。
少女「私、が、魔族、だと、解った、事、です」
見兼ねたのか、少女は言葉を、付け足した。
魔王「あ、それね。それは簡単よ、あなたに触れた瞬間に魔力の波動がしたもの」
少女「魔力、を、感じられる、って、あなた、も、魔族、です、か!?」
少女は驚き、魔王の顔を食い入るように見つめた。
魔王「えぇ、聞いて驚きなさい!私は全魔族を統べる魔……」
魔王が名乗ろうとした瞬間、遠くからガラーンガラーンと鐘の音が鳴り響くのが聞こえた。
鐘の音に少女はビクと身体を震わせ、慌てた立ち上がって荷物を背負った。
少女「あ!?私、帰ら、ないと、いけません、また、機会、が、あれば、お話、して、下さい」
そして、魔王の返事も聞かずに土砂降りの雨の中を駆け出していった。
魔王「あ、ちょっと!?……なんなのよ、もう……あら?」
少女が走り去った後、ふと少女の座っていた隣りを見ると粗末な傘が廃屋の壁に立て掛けてあり、その近くに小さなペンダントが落ちていた。
魔王「ペンダント?……あ」
ペンダントには小さな写真が入れてあり、白髪の魔族と思しき男と人間の女性、それに魔族の男が抱いている小さな赤ちゃんが写っていた。
魔王「これがあの娘の両親……あら?……白髪、魔族……あ!?」
魔王は写真に写る魔族の男に心当たりがあった。
魔王「……ハァ、あの人の子供なら届けてあげないといけないわよね」
魔王は深いため息をついた後、ペンダントを胸の内側にあるポケットにペンダントを入れ傘を差し少女が走り去った後の道を進みだした。
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