第1章

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三日前のあの晩までは何もかもが順風満帆だったはずなのに、と頭を抱え魔王は姫勇者の顔を思い出していた。 満月の光で白銀に輝き靡く長い髪、妖しくも美しい紫水晶のような瞳に、まるで彫刻のように整い怖いほどに美しく華やかな容姿。 そしてーー魔王である自分が言うのもおかしいけれど、禍々しい三日月のような口が怖かった。 思いだしただけで身体がブルッと震えた。 (あんなのが勇者だなんて……人間って生き物は私達より怖いじゃない) 震える身体を自分で抱きしめ、しばらくガタガタと震え続けた。
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