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「そんな!!」
魔法士長は驚いて声をあげる。
「本当だ。
それは魔法士の知識として伝わっていないのか?」
「…」
魔法士長が黙った所を見ると、本当に知らなかったようだ。
「ですが…」
「ああ、もう時間が惜しい。
早くしないと城が壊されていくだけだ。
キース、行ってくれ。
私の方には何も近付けないように気を付けてくれよ」
「わかった。
あんたら、巻き添え食らってもオレは責任取らないからな!」
キースはそう言うと、走って〈ヨルムの守護者〉の方へ向かう。
残された魔法士長とドルナスの間に、気まずい沈黙が流れる。
ドルナスは黙ってキースを目で追って、〈ヨルムの守護者〉の方を見た。
しばらくすると、突然〈ヨルムの守護者〉の全身が燃え上がる。
「何!?」
魔法士長をはじめ、魔法士達が全員手を止めて〈ヨルムの守護者〉を見つめる。
炎の中からあちこちに火傷を負った〈ヨルムの守護者〉が出てきて、咆哮をあげた。
〈ヨルムの守護者〉が暴れだして、城の瓦礫が辺りに舞う。
その時に、兵士が1人、魔法士長に駆け寄ってきた。
「報告します。
ファリア様からのご命令で、魔法士達はただちに街の魔物掃討作戦に参加するように、とのことです」
「何?ファリア様から…」
魔法士長は、ファリアの事を良く思ってはいなかった。
何も知らない王女のくせに、王族の権限で偉そうに軍にいて、指示を出している、と思っている。
だが、王や王族、主要な貴族が避難している今、ここに残っている王族はファリアしかいなかった。
王族の命令を聞かない訳にはいかない。
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