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キースは転移魔法で、イルデア共和国近くの森の中に姿を現した。
『キース、聞こえるか?』
ドルナスの思念が頭の中に響いてきた。
『聞こえるよ。
どうしたんだ?』
『いや、その身体の説明の補足をな…
リイから聞いたかも知れないが、情報集めに協力して欲しい』
キースは嫌そうな顔をしてみるが、表情には出ない。
『魔王の造った魔成生物と〈ヨルムの守護者〉の肉を食べて欲しいんだ。
食べればその生物の情報がその身体に蓄積されていく。
あとで分析したい』
『食べると言っても、ゆっくり食べている暇なんてないと思うよ』
『ひとかけらだけ口にすればいい。
もしくは血とか体液を飲むとか、舐めるだけでもいい。
戦闘中に出来るだろう』
『無茶言うなぁ…善処するよ』
そう言ったが、キースはふと気付く。
『なあ、魔成生物だとわかるのかな?
ただの魔物かも知れないじゃないか。
片っ端からつまみ食いするのは大変だし』
『今のお前だったら、見ればすぐにわかるぞ』
『了解』
キースは薄暗くなってきた森の中を歩き出した。
魔物の気配はない。
街道に出ても、やはり魔物に遭遇しないし、気配も感じない。
魔王の、魔力を排除した生活をする、という政策が成功しているからなのか。
魔王の目指す方向は正しいのか?
魔王は〈ヨルムの守護者〉を使って国を滅ぼして、一体何がしたいのか?
キースはイルデアの首都に向かいながら、複雑な思いを抱いていた。
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