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イルデアの街は暗く静まり返っていた。
所々にある街灯と宿屋の灯りだけが、辺りを照らし出している。
イルデア元首の住まいである官邸は、標識もあり、中央にある大きな建物だったため、すぐに見つかった。
官邸に向かっている途中で、何人もの治安維持部隊とすれ違う。
街中の警備には力を入れているようだ。
官邸の前に着いたキースは、高い壁に囲まれた周囲を一周歩いて、再び正面に戻る。
この不可視の魔法を纏ったまま、魔王の元へ侵入しようと思ったが、そう簡単にはいかないらしい。
官邸全体に、魔法効果を無効にする強力な結界が設置されている。
キースには破れない事もないが、魔力コントロールが未熟なため、中にいる関係ない人間を魔力中毒にさせるくらいの魔力を浴びせてしまうかも知れない。
どのみち、キースが魔法を使うと威力が大きすぎるため、魔王との戦いであまり魔法を使うつもりはなかった。
狙いは魔王1人なのだ。
但し、邪魔をする者がいるならば、排除しなければならない。
そして、ドルナスからの頼まれ事もある。
「…最初から化け物として行ったほうが良さそうだな」
キースの気持ちの問題ではあるが、その方が魔成生物の血肉を啜る、という行為を自分の中で正当化出来るような気がする。
キースは服を脱ぎ、身に着けていた装備全てを外して、全身の黒いゴツゴツとした皮膚を現にした。
剣だけは腰に下げる。
脱いだ服と装備を纏めると、転移魔法を使ってドルナスの合成室の檻の中へ送った。
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