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「貴様など、その程度でキース様には通用しない」
「…ドルナスがお前の事を救いたがっていたけど…
残念だよ」
キースは足に力を入れて踏み下ろした。
見れば、細切れにした下半身も、握り潰した両腕も、再生が始まっていた。
身体が再生されたとしても、頭を潰した以上、再び動き出す事はない。
魔成生物…恐ろしい生物だ。
「〈ヨルムの守護者〉といい、このケーニスといい、魔王は悪趣味だ…」
キースは〈ヨルムの守護者〉の事を考える。
攻撃力、再生能力、生命力、どれをとってもこれ以上ない程の化け物だ。
ケーニスでさえ、この再生能力だ。
本当に倒す事が出来るのだろうか…
しかし、共同国家ヨルムの残した負の遺産を消す事は必要だと、キースは思う。
魔成生物…人間も魔物も化け物にしてしまう…こんなものは、世界に必要ではない。
そして、こんな生物を造りだし続けている元凶は、魔王。
キースは廊下の先を見て、歩き出す。
廊下の先にある横の通路から、初老の男が出てきた。
「ケーニスを簡単に倒してしまいましたか。
いやはや、驚きましたなあ」
初老の男は、キースに向かって話し掛ける。
「あんたもやるのか?」
キースは首や肩を回しながら答える。
「まさか。
私は普通の人間ですよ。
あなたと戦えるはずがありません」
「では何だ?」
「キース様の元へご案内しましょう。
こちらです」
初老の男、宰相のガジェスは、通路の横路を歩きだした。
キースは少し距離をあけて、その後をついていく。
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