793人が本棚に入れています
本棚に追加
「なぜ案内する気になった?」
キースは辺りを注意深く警戒しながら聞く。
「あなたの強さはわかりましたから…これ以上官邸内を壊されても困ります」
「オレが壊した訳じゃない」
「間接的には壊しましたよね?」
ガジェスの言った事に対してキースが反論すると、すぐに言い返された。
「見ていたのか」
キースは確信を持って聞く。
「ええ、キース様もご覧になっていらっしゃいました」
ガジェスは、にこやかに言う。
この男、先程から笑顔を貼り付けたままで、何を考えているのかわからない。
気持ち悪い、とキースは思った。
豪華な扉の前に到着すると、ガジェスは立ち止まる。
「この部屋です。
どうぞ」
ガジェスは礼をとり、一歩下がった。
「…」
キースは無言でドアノブに手を掛け、扉を開く。
そこは、中央に執務机と応接セットのある広い部屋で、机の上の灯りだけが室内をほのかに照らしていた。
よく見ると、執務机の向こう側の椅子に誰かが座っている。
「…魔王」
キースはつぶやいた。
「ここまで乗り込んでくるとは、私も予想していなかった」
椅子に座っていた人物は立ち上がり、キースに近寄ってくる。
ほのかな灯りに、今はイルデア共和国元首であり、キースの本来の身体である、薄茶の髪と瞳を持つ整った顔が浮かび上がった。
最初のコメントを投稿しよう!