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キースにとっては魅力的な申し出に、どうしても気持ちが揺れてしまう。
後の条件などはどうでもいいのだ。
何よりも、身体に戻れるかも知れない、という希望に、すがりつきたい気持ちになってしまう。
だが、魔王にされた仕打ちは屈辱的で、キースの事を道具としか見ておらず、忘れる訳にはいかない。
「…貴様の目的とは何だ?」
キースは絞り出すように言う。
「私の目的はひとつ。
人間達の中から魔法の存在を消す事だ」
魔王は挑むようにキースを見る。
「魔法の存在を消す、だと?」
「そうだ。
人間達はわかっていないのだ。
自然から魔力を抜き出す事が自分達の首を絞めているのと同じという事に。
魔力を動力としている施設は、まだ多く残っているし、一部の人間は魔法を使っている。
この調子で周囲の大気から魔力を集めて浪費していれば、大地がかつてのヨルムがあった場所のように、砂漠になるのは遠い未来ではない。
人間は昔から魔力を正しく扱い切れていないのに、傲慢に魔法を使いたがる。
魔族が人間に魔法を教えた事が、そもそもの間違いだったのだ。
だから、私はその過ちを正す」
魔王は決意を込めて言う。
「過ちを正すというのが、バジュノッドを壊滅させたのか!?」
「バジュノッドは魔大砲なとどという馬鹿げたものを作って、大地の魔力の枯渇を加速させたのだ。
不本意でも強攻策を取らなければ、あの土地は近いうちに死の大地となる。
どうせあの王に何を言っても無駄だろう、これは世界のためには必要悪なのだ」
キースの怒りに、魔王は表情も変えずに応えた。
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