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確かに魔王の言うように、人間は魔法を使うべきではないのかも知れない。
でも、人間は既に魔法を知ってしまった。
使い方さえ正せば、人間だって魔力や魔法をうまく利用出来ると思う。
魔王の言う事は正しいが、やり方は間違っているとキースは思う。
「貴様の立場があれば、これからうまく人間を指導して魔法を使わないように出来るだろう」
キースは魔王に尋ねる。
「私は長く人間を見てきたが、人間は常に利便性を求める生物だ。
一度手に入れた利便性を放棄するのは困難だ。
我が国でも多くの反発があったが、五年かけてようやくここまで来た。
私が居続ければ、この国に魔法が戻る事はないだろう。
だが、人間は寿命が短い。
指導者が代われば、政策も変わる。
人間の間に魔法という存在があれば、再び魔法が復活する可能性がある。
その可能性を私は潰したいのだよ」
「…」
「わかってもらえたかな?
キースよ」
黙っているキースに対して、魔王が同意を求めた。
キースは返事の代わりに剣を抜き、切っ先を魔王に向ける。
「貴様の言うことには正義があるのかも知れない…
でも、オレはオレの心に従って動く。
貴様と〈ヨルムの守護者〉だけはこのまま放置出来ない。
覚悟してもらう」
魔王はふう、と息をつき、キースを見た。
「残念だ」
キースは魔王に向かって走り出し、身体の特性を生かした速さで斬りつける。
魔王は素早く手元に転移させた剣を掴み、キースの剣を受け止める。
同時に、ガキン、と大きく金属音が鳴り響いた。
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