793人が本棚に入れています
本棚に追加
魔王は切られた腕を押さえてキースと距離を取る。
「浅かったか…」
切り落とすつもりで向かったが、腕は繋がっている。
だが、かなりの深手を与える事に成功した。
「フフン、さすがだな。
だが、どうという事はない」
魔王が傷口から手を離すと、腕からはどくどくと血が流れ出しているが、徐々に止まっていく。
よく見ると、傷口が再生しているようだ。
「やはりそうか…」
キースは剣に付着した魔王であり自分の身体の血を舐めてみた。
間違いなく魔成生物で、しかもほとんどが魔物と言える割合で合成されている。
人の形をしているのが不思議な程だった。
ドルナスの言う通り、魔王の魔成生物造りの技術が優れていると言うより他ないようだ。
キースはただ悲しくなった。
そして、自分の身体を弄ばれた悔しさと怒りが、改めて込み上げてくる。
自分の身体は全くの別物になり果てていたのだ。
「それはもうオレの身体じゃない。
この世から消し去ってやる…!」
キースは、魔王に向かって走る。
そして、魔王に猛攻撃を仕掛け、息をつく隙を与えない程の鋭い攻撃を数多く繰り出した。
魔王はキースの剣を捌いているが、手数の多さに捌ききれずに攻撃が当たり始める。
「この身体が惜しくないのか?
戻れるかも知れないのだぞ!?」
魔王は少し息を切らしながら言った。
「血を舐めてわかった。
その身体で今のオレは受け止めきれない!」
やはり人間の身体が少しでも使われていると、キースの魔力に耐えられないようだった。
以前ドルナスに告げられていたので、わかってはいたが、認めるのはやはり辛い。
キースは気持ちを振り払うように剣を振るう。
最初のコメントを投稿しよう!