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魔王の反応は早く、キースの剣は魔王の剣によって受け止められる。
「うらぁっ!!」
キースはそのまま力で押し込み、剣を払って魔王を壁まで吹き飛ばした。
魔王は剣で防御していた体勢のまま、ドン、と、大きな音を立て、背中を壁で強打する。
「うぐっ…!」
壁は壊れていないが、ダメージを受けたのか、魔王はその場にうつ伏せで倒れた。
キースは魔王に近付く。
部屋中を荒れ狂っていた炎は鎮火し始め、魔成生物は焼き尽くされて、床に黒い跡が残るのみになっていた。
「これで終わりだ」
魔王を足元に見下ろして、キースは言う。
突然魔王は起き上がり様に、キースに向かって魔法を放った。
凄まじい光と轟音と共に、キースの全身は太い雷に襲われ、見えなくなる。
「いくら魔成生物といえども、この魔法ならば!」
魔王は息を切らしながら、魔法の残光を見つめていると、ドン、と、胸に衝撃を受けた。
魔王の胸に、剣が深く突き刺さっている。
「残念だったな」
残光が晴れて、キースは無傷のまま、魔王に刺さった剣を抜いた。
魔王の胸から、おびただしい血が流れ出す。
「な、なぜ…!」
魔王は胸の傷を押さえながら、膝をついた。
「極魔血晶というのは便利だな」
魔王の放った魔法は、剣に嵌まっているキースの本体とも言える極魔血晶に魔力を吸いとられて、効果がなくなっていた。
極魔血晶は、キースが入っていないとその性能を発揮しないため、魔法が当たる瞬間に、キースは極魔血晶に戻っていたのだ。
「お陰で少し魔力が回復したぞ」
キースが戻った時の極魔血晶の魔力は、満タン時の4分の1程度しかなかった。
元々キースが極魔血晶を離れた時に半分程しかなかったのが、〈ヨルムの守護者〉の起動に使われて、さらに減っていたようだ。
減ったとはいえ、そもそも尋常ではない量の魔力だから、どれ程減っているのか気付いていなかった。
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