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転移したキースは、ドルナスの合成室の檻の中に姿を現した。
先に脱いで送っておいた服や装備を身に付ける。
着替えている途中にも、上の方から大きな音がしていて、時折地震のように激しく城全体が揺れている。
最後に兜を被ると、キースは走って部屋から飛び出した。
『ドルナス!どこにいる!?』
キースは走りながら、ドルナスに向かって思念を送った。
ドルナスからはすぐに返答があった。
『キースか!!城壁の外だ!
〈ヨルムの守護者〉が城を破壊している!
私は退避して今はファリアと一緒にいるぞ!』
『わかった!すぐに向かう!』
キースは揺れる城内を急いで走り、城の外に出た。
外は朝日で明るくなり始めている。
城の方を振り返ると、〈ヨルムの守護者〉が城の屋根に取り付き、その強靭な尾や脚を使って城を破壊していた。
壊された屋根の瓦礫が降ってくる。
キースはそれを避けながら、城壁に向かった。
城壁の外は酷い惨状だった。
アルダの城下町は、至る所から火の手があがり、魔物達が蹂躙している。
まるでバジュノッドの二の舞だ。
街のあちこちで城の兵士達が集団でまとまって魔物と対峙していた。
兵士達と一緒に、白い毛並みの、大きな狼のような生物があちこちにいて、魔物に向かって攻撃を仕掛けている。
よく見ると、白い狼のような生物の背中には、アルダ王国の紋章が大きく刻まれている。
「あれは、魔成生物か!!」
キースは、その生物から自分の魔力が感じられるのも確認した。
確か、ドルナスは魔成生物が保管されていると言っていたが、自分から吸い取った魔力で起動したのだろう、とキースは思う。
城壁の外からは、魔法士達が〈ヨルムの守護者〉に向かって攻撃魔法を放っているが、当たっていても全く効果はないようだ。
〈ヨルムの守護者〉は、魔法士達の攻撃など気にしている素振りも見せずに、城を壊す作業に集中している。
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