決戦

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「やるさ。 そのためにオレがいるんだろう? オレ以外に誰がやれる?という話だな」 キースは兜の奥で赤く鋭い瞳を和ませた。 「すまないな。 その身体はそう簡単には死なないように造ったから期待しているぞ。 では早速行こう。 早くしないと城が全壊してしまう」 「キース、よろしくお願いします!!」 ラシルも力強く言う。 「わかった」 ドルナスに続いてキースが行こうとすると、ファリアがキースのマントの端を掴んで引き止めた。 「キース…」 「ファリア、どうした?」 「…」 ファリアは、キースのマントを掴んだまま黙っている。 「ドルナスの魔成生物は見たところ強いから、今いる魔物相手ならば大丈夫だろう。 ファリアが出る必要はないと思うよ。 〈ヨルムの守護者〉はオレ達で何とかするから心配しなくてもいい。 ファリアも大変だけど頑張れよ!」 キースは、マントを掴んでいるファリアの手にそっと触れた。 ファリアはビクッとしてキースを見上げる。 「私は今の私の役割を果たす。 そして、キースが全て終わらせてくれると信じて待っている。 頼む、キース」 ファリアはキースの赤色の瞳を見つめながら言った。 キースは、ファリアをしばらく見つめ返してから、ファリアの耳元に顔を近付けて、ささやく。 「ありがとう、ファリア。 ファリアはオレを救ってくれた。 オレはファリアのために動くと決めたんだ」 キースはするりとファリアから離れて行ってしまった。 「キース!」 ファリアは慌てて声を掛けるが、キースには届かない。 キース、どうか、無事に戻ってきて…!! ファリアは少し潤んだ瞳で、去っていくキースの背中を見つめた。
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