4.

9/20
前へ
/321ページ
次へ
まるでどこかの執事のように優雅な動きでティーカップを差し出す。 「どうも……」 淹れ立てのようでカップからは白い湯気がでていた。せっかく淹れてくれた手前断るのは気が引けるので、一口飲んだ。 まろやかなミルクティー、やわらかい口当たりで美味しい……けど熱い。 「あ、会長から聞いたのですが、緊張している時は手の平に“人”と三回書いて呑み込むといいそうですよ。是非一度試してみてください」 「は、はぁ……」 何だか拍子抜けする。まあ、あれされないだけましか……。 「ねーねー水月ちゃんだけ話していてズルいなぁ~~。俺らにも紹介してよ~~」 「………」コクコク 甘えるような猫なで声でそう言ったのは知らない顔の内の一人。 燈鳳指定のカッターシャツを着崩し、金髪をワックスで跳ねさせた如何にもチャラそうな男だ。 そしてそれに同意するように頷く大柄な男。赤茶色の長い前髪が片方の目を隠している。 体格が良いので一瞬警戒したが、外に出されたぼんやりとした右目を見て解いた。なんだか大型の犬みたいだ。 「“ちゃん”付けは辞めろと言ったはずですが?海原(かいばら)くん?」 黒いオーラを出す西華院に海原と呼ばれた男はあははと軽く笑う。 「まーまー細かいことは気にしないの。水月ちゃんも俺のこと、洋(よう)ってよんでよ。昔みたいにさ」
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3245人が本棚に入れています
本棚に追加