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薄暗い路地裏にくぐもった声が二つ…いや、三つ
「ち、あんま持ってねぇぞ?この兄ちゃん」
「け、まぁいい酒代くらいにゃなるだろ」
「…ぅ」
二つの声主はそう言って下卑た笑いを響かせ、路地裏をあとにした
呻き声を上げる残された声主は、震える足で壁に手をつき立ち上がる。大陸でも珍しい黒髪が深く被っていたフードから零れ落ちた
「いつつつ……はぁ」
口元には殴られて出来たのか血が垂れている
「…今日もいい月だ」
ふと顔を上げ、漆黒に彩られた闇夜を見上げそう呟いた
「よっ……と」
ヨロめく身体を壁に預け溜め息をつく
「月の…光…か」
フードから覗く瞳はまるで生気の無い…死んだ魚のようだった
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