Epsode.1

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 人いきれでむっとする夜更けのバザール。どこからともなく漂う腐敗臭と香の甘い香り。路上には無数の屋台が並び、食欲をそそる匂いがたちのぼる。せわしなく行き交う異国の人々の波にもまれ、彼等から発散されるきつい体臭が鼻につく。ありとあらゆる雑多な異臭が混ざり合い、さらに濃度を増して独特の臭気を放ちながらねっとりと身体に絡みつく。  僕はこみあげる吐き気を必死にこらえながら首を回し、ぐるりと周囲を見まわす。屋台で繰りひろげられる商売人と観光客との白熱した値引き合戦、うつろな表情をさらしたまま路上に座りこんで煙草をくゆらす老人、路地裏で客を引く黒い瞳と褐色の肌がエキゾチックな街の女たち。僕が知っている日常とは完全に切り離された、見なれぬ情景をぼんやりと瞳に映してあてもなくただひたすら彷徨い歩く。
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