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その題名を見た魔王の顔色が一気に赤くなった。
「シェルスっ!そなたは余にそのようなモノを読めとほざくか!」
子供の教科書を神官シェルスの手からひったくって、床に叩きつけた。
「恐れながら。動ける神官が少なくなった今、御身をお守りする結界の強化にも限界がありますれば。猊下ご自身に御力を付けて頂く要がございます」
猊下の荒ぶる様子にも引き下がらず、シェルスは教科書を拾い上げ、辛抱強く差し出した。
「~~~っ」
魔王は牙を剥き出して唸ると、観念した様子で教科書に手を伸ばす。絵が多い本をパラ見しながら魔王はいかにもつまらなそうに頬杖を着いた。難しい古代語には丁寧にフリガナがついている。魔王は何だか惨めになってきた。…確かに己には読めない単語だが…
「これをこなしたら余の魔力は増すのか。先代のように」
大した期待を込めないで、呟くように尋ねる。目は“あらゆる魔法の基礎”の項を追っていた。
「現時点では最良の策であるかと。…それから猊下」
今度は何だ、とばかりに魔王が不機嫌に紅の目を上げた。
「頬杖はいけません。」
「………。」
魔王はもそもそと頬杖を止め、姿勢を正した。
その光景に、今まで一言も発さず、絹ずれの音を1つ立てずに、石像のように机の斜め後ろに控えていた参謀が吹き出した。
短気な魔王の機嫌を損ねるにはそれで十分だった。
「貴様ーっ!この魔王を笑いおったな!!」
怒りのあまり腰が浮き、背中の翼が音を起てて開く。翼に打たれた椅子が後ろに倒れた。
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