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「ソーニャ」
緋色の絨緞を引いた階段の踊り場で、青年は鳶色の目を大きく見張って足を止めた。
「ミハイルさん」
広間の隅から、澄んだ声が響く。
踊り場に灯された蝋燭の火が、声の主たる少女の姿を浮かび上がらせる。
白い木綿のエプロン姿で細腕には金盥を抱えていた。
しかし、まだ十四歳のこの少女の豊かな栗色の髪は、本来は豪奢なドレスを纏うべき身の上を主張するかの様に艶やかにうねり、エメラルドじみた碧色の目は真っ直ぐ前方を見据えていた。
と、その碧色の瞳が意を決したように張り詰めた。
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