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*運命の人*‐Side いちこ‐
しまった!
学校に遅刻してしまう。
そう思いながら、自転車にまたがると家の前を一台の自転車が通過した。
「颯太(ソウタ)!」
あたしが彼をそう呼ぶと、「おーっ」と言って、スピードを緩めながら、振り返る。
あたしと颯太は幼馴染。
お家は、斜め向かいにあって、幼稚園、小学校、中学校、高校とずっと同じ学校に通っている。
待ち合わせしてるわけじゃないのに、毎朝同じ時間にあたしたちは家を出て、学校までの道を一緒に登校する。
「お前、治ったのか、おたふく?」
「治ったよ。颯太にうつせばもっと早く治ったのにな」
「ばーか。俺は経験者」
「そうだったっけ?」
記憶にない。
「幼稚園のときだけど」
ああ、それなら記憶にないか。あたしは心の中で頷いたのだ。
あたしたちは、いつもこんなたわいのない話を繰り返している。
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