一夜

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 頭部が熱い………焼けるように熱い……… 脳髄が悲鳴を上げる。もう無理だ。限界だ。  四方が赤一色の壁に囲まれた一室に一人の青年が倒れている。  青年は失敗した。 ───ナニニ?──────ワカラナイ。 ここ数年の記憶がガラリと抜け落ちているようだ。  俺の名前は?「小田切……彰…、よし。名前は覚えていたようだ。ここはどこだろうか?」  一面、赤、赤、赤、悪趣味な模様の壁、床の中央には魔法陣と大量のノコギリソウの束、爽やかな香りが鼻孔を刺激する………  青年は立ち上がり正面のドアノブを握る。   「ッ!」その瞬間右手の甲に鋭い痛みが走る……違和感は消えず………  「──なんだこれ?」右手の甲に赤い聖痕がきざまれていた。  続いて全身を蝕むような激痛が襲いかかり、思わず膝をつく。 俺の頭の中から ──聴こえる── 「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。  素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師○○○○○○○。降り立つ風に壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉(さんさ)路(ろ)は循環せよ」  その瞬間部屋の空気が変わった、部屋の魔法陣が光り、 密閉された部屋なのにも拘らず突風が吹き砂煙が渦を巻く。  爆撃のような轟音とともに、無防備な青年の体を内側から引き裂くような痛みが走った。何かが繋がった。  「ああぁぁあああああぁぁぁ―――――――――」  辺りを包んでいた砂煙がバッと一瞬ではじけ、鎧に身を包んだ重装備の美しい女性が直立していた。 一瞬の痛みも忘れ去ってしまうほど、俺は見とれていた…  そして女性が口を開いた…  「―問おう、聖杯を求め、私をセイバーの座(クラス)としここに呼び止めたのは貴様(キサマ)か?」  悪趣味なこの一室には似合いもしない、清んだよく通る声が語りかけてきた………
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