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僕は、真っ暗闇の中、風を纏っていた。
風を纏っていたといっても、魔法や超能力など非科学的なものによるものではない。
ただ、地球の物理法則に従って僕が地面に吸い寄せられているだけだ。
気持ち悪い。そんな負の感情だけが頭の中を支配していた。
体中の血液、臓器が頭に向かって逆流していく中、僕は目の前をスローモーションで流れる20階建てマンションの階数を上のほうから順番に数えていた。
20、19、18、17、16、15、14…………。
そのカウントダウンが13になった時に部屋の中にいる女の子と目が合った。僕の視界から見て上下反転しているその子は、以外にも呆気にとられるでもなく、悲しそうな表情で僕を見ていた。
真っ暗な部屋の中、なぜかその悲しそうな表情だけは読み取れた。
不思議なことだと思ったが、その疑問を解決する暇もなくカウントダウンが1になり、体中を激痛が襲った。
鼻を刺す鉄の匂いが自分の血の匂いだと悟った時には、僕の意識は闇に沈んでいた。
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