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少女の懸命な訴えに対する賢勝の答えはこうだ。
「俺はいじめられた経験がないから知らん」
ごもっともすぎて少女は怒りを通り越して呆れてしまう。ポカンとした後に吐息を零す少女の茶色い頭を賢勝は見下ろし、
「だが、俺が思うに誰かを頼るのは間違ってないと思うぞ」
「…頼る…?」
「自分ではどうにも出来ねえんなら誰かに相談してみろ、そんで頼れ。信頼出来る人はお前にも一人くらいいるはずだ、そいつを頼って一緒に問題に挑めばいい」
「…………いませんよ、誰も」
また少女は俯いてしまう。掠れた声はこの上なく弱々しかった。
「先生に言ってもきっと悪化するだけ……頼れる友達もいません……親には心配させたくない……………私は、ここでは一人ぼっちなんです」
「そうかぁ、そりゃ可哀想に」
どこまでも他人事な調子でさっぱりした言葉を吐く賢勝。
でも、そんなさっぱりして軽い調子のまま彼はこう続けたのだ。
「―――だったら俺を頼れよ。俺がお前を助けてやるから」
「―――」
トクンッ、と。少女の鼓動が一度だけ大きく響いた。
「ラッキーなことに俺も二年だ、同じ学年ならいろいろ都合がいいし、ひょっとしたら同じクラスかもしんねえしな」
「…………あ、そういえば、うちの教室に新しい机が置いてあったっけ」
「マジ!?え~、なんだよ同じクラス確定しちまったのか?こういうのは偶然教室で出会って運命感じるドキドキな展開じゃねえのかよ、つまらん」
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