序章

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戸口の外には、分厚い頬被りをした小さい老婆が立っていた 「昨日もしばれたねぇ、ほらあんた一人身だろ、うちの爺様に作った余りだけど食べるかい?」 シワだらけの人の良さそうな顔がニコッと笑う 「…かたじけない、ありがたく頂戴いたします。」 姿勢良く頭を下げると 「あんたもいい歳なのに、嫁さんの一人も貰わないでこの先どうするのさ?剣道場には若い女は来ないよ。」 まったくと言った顔で、義勝を見上げる 「いい男なんだから、もったいないよ。」 「は…、まだここに来て間もないもので…。」 「この村は若い男が少ないから、あんたが来てから話が持ちきりだよ。」 「……………。」 老婆が、白い息を吐きながら優しい声音で言う 「あんたがこの村に来た時から、この辺では見かけないような人だとは思ったけどね… 人には言いたくない過去の一つや二つあるだろうさ、 でも安心しな、ここでは自然があんたを癒してくれるだろうよ。」
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