episode 45 最後の晩餐 ②

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よく似てる。 背格好も年の頃も きっとほとんど変わらない。 彼はまるで もうひとりの僕――。 ただひとつ違うのは 「君って男の誘いは断らないんでしょう?」 彼がジキルとハイドのように、もう1つ裏の顔を持っているところだ。 「驚いた!君ってそういうタイプなんだ。――で、何が言いたいの?」 「言いたい事、そうだね――」 僕より少し切れ長の瞳が光って 突然、長い腕が僕の身体を抱きしめた――。 「ねえ、僕の贈り物――気に入ってくれた?」 冬馬は甘い声音で、僕の耳元に囁きかける。 「贈り物――?」 悪戯な小悪魔。 「まだ分からないの?」 白い指先。 まるで鏡の中から伸びてきたみたいに僕の髪をすく。 「夕べ届いたでしょう?晩餐会の最中に」 そして――すべてが繋がった。 「君だったのか……!」 隠し撮りされていた僕らの秘密。 一番いけない場所で暴かれ 貴人たちの目に晒された。 「写真見てびっくりしたよ。まるで――自分がお兄様方に弄ばれてる気分になった」 冬馬の口元が物憂げに綻ぶ。 頭に血が昇って、僕は自分の分身みたいな男の腕を跳ね除けた。 「――何が狙いだ?」 「さあね、ただ」 冬馬は妖艶に笑って 「この家によく似た末っ子は、2人もいらないかもね」 言った――。 家族の増えた天宮家に 新しい嵐が起ころうとしているよ。 僕はそうだね 飲み込まれるしかなさそうだ。 第9章 【完】
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