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episode 46 新しい朝
新しい朝が来た。
「こちらに視線お願いします」
反射して目の前の相手が見えないほどたかれる、フラッシュの嵐。
「ありえない」
僕の左隣。
黒づくめのスーツを着た征司が舌打ちする。
「まったく、ありえない」
右隣からも。
真っ白なスーツに身を包んだ九条さんのため息が聞こえる。
「いいから黙って――笑って下さい」
2人の真ん中に立たされ、ものの見事に中間色のグレーのスーツを着せられた僕は――。
「すみません、こっちにもお願いします」
満面の作り笑いを浮かべ無数のカメラに微笑んだ。
僕らの手の中には、女性のボディラインを模した美しい香水瓶が握らされていて。
あろうことか僕らの頭上には――。
あの悪夢の晩餐会でお披露目された禁断のポートレートが、それはゴージャスなポスターへと加工され掲げられていた。
「すみません、以上で『スキャンダル』の製作発表は終わりにさせて頂きます」
主催者である椎名さんの合図で、マスコミは会場から完全にシャットアウトされる。
「いやあ、お疲れ様。皆さん、いいモデルっぷりでしたよ」
椎名さんの労いの言葉を聞くや。
「くだらない!」
征司が手の中の香水瓶を放り投げた。
「ごめんね。マスコミ取材はこれきり一切なしだから」
すかさず大事な商品をキャッチした椎名さんは、悪びれず雅な笑みを浮かべた。
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