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子供の頃から、お洒落をするのが大好きだった。
世界中でたったひとつの特別な服を作る事に憧れて、小さい頃、私はいつも洋服の絵ばかり描いていた。
私がアパレル業界の仕事に就いたのは17歳の時だった。
アルバイトで販売から始め、そのまま会社に就職して店舗責任者を経験し、今ではいちブランドのメインデザイナーだ。
18歳の時。
偶然出会った2つ年上の彼、遼くんを好きになった私は、煙たがられてもめげずに猛アタックをして、20歳になると同時に結婚をした。
遼くんはその時まだ学生で、彼の両親からは猛反対された。……駆け落ち同然だった。
それでも私と彼は、可愛い息子と娘に恵まれ、幸せな日々を過ごしていた。
でも、いつからだろう。
新しく立ち上げるブランドのテーマが、トレンドとマッチして売り上げを大きく伸ばす毎に、仕事の忙しさも倍増した。
大好きなショッピングに行けないどころか、家事すら高校生になった息子に任せきり。
遼くんも仕事が忙しい。
製薬会社で創薬研究をしている彼は、仕事場である研究所が遠いことも手伝って、帰宅出来ず会社に泊まる日も多い。
責任のある立場になれば、プライベートが犠牲になるのはある程度仕方が無いとは思ってる。
仕事はやりがいがあって、楽しい。
だけど、最近不安ばかりが積み重なって。
このまま追われるように仕事をし続けて、私に残るものは何だろう。
昔みたいに遼くんと2人で食事をしたり、家族みんなで出掛けたりしたい。
仕事が忙しくて息が詰まりそうになると、そう思う。
……私は人生に焦りを感じている。
どうこう思っていても朝は来て、仕事の為の支度を始めなくてはならない時間は刻一刻と迫りくる。
カーテンの隙間から射し込む日差しを避けようと、私は毛布を頭までかぶった。
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