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「お待たせ。」
カチャリと置かれたのは蜂蜜の入ったレモンティーだった。
「そんなにひどい顔してる?」
「泣きはらしたような顔してる。…甘いもの飲んで落ち着きなさい。」
促され一口だけ飲むと全身から力が抜けるような気がした。
「おちついた?」
「ありがとう・・。」
その様子を見た母から出されたのは一枚の写真だった。
「これは・・?」
「お母さんの高校時代の写真。映ってるのは柊介くんの両親・・未緒ちゃんと雅樹くん。」
これに何の関係があるのかといぶかしむと母がおもむろに口を開いた。
「雅樹くんの緋色の目を見たのもこの頃。…柊介くんの姿を見たんでしょ?緋色の目と牙。」
「・・・・うん」
隠し通せなくて素直にうなずいた沙良に軽く微笑んでから話を続ける。
「びっくりしたでしょ?…始めは戸惑ったしお母さんも驚いた。」
ぎゅっと手を握りしめながら沙良は黙って話を聞く。
「雅樹くんは…その日を境にどんどん人と距離を取っていった。
でも、その度に未緒ちゃんが距離を縮めてた。」
写真を見ながら昔を懐かしむように語る母をただ黙って見つめていた。
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