0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「世界の始まりと終わり」
踊り飽きた君が僕の隣に座ったのを
偶然とか運命のせいにしたくない
きっと僕達はお互い何か欠けていたから
それを埋め合わせる力が働いたんだろうって
そう思いたいじゃない?
「喉が乾いたの、一緒に飲まない?」
ロックアイスみたいにクリアな声
僕はズブロッカ、君はチェリーの乗ったカクテルを
天井にぶら下がったモニターで
ウッズが満月みたいにスイングしてた
新世紀の五月はまだ静寂で
僕達は何も分かっていなかった
触れた指先から恋が始まった事も
もうすぐ世界が終るって事も
寄りかかる肩の暖かさを伝えるのは
言葉以上に通じ合う不思議な力
片町は今日も賑やかで、寂しくて
僕達みたいに何かが欠けてるってのは
気のせいじゃ無いだろう?
「この街はいつも濡れてるね」
そりゃ君の故郷は氷の世界だろうけど
ここにはここの良さがあるって
余所者の僕が言うのも変だけど
愛し合うには充分過ぎる程素敵な街
皆が新世紀に浮かれてた
僕達は雨の街で幸せに包まれ
始まりの予感を感じていた
終わりの近い世界の中で
最初のコメントを投稿しよう!