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最後の最後にこれかよ。
ものすごく、カッコ悪いんですけど。
立ち並ぶ、教官の手前。
内心、いたたまれない思いを噛み締めながら。
「お世話になりました!」
半ばヤケ気味に、大きな声で挨拶をして。
父親の車へ乗り込んで。
最後はあっけなく。
少年院を後にした。
「この前、群馬のアキちゃんの結婚式いったらね。リエ姉さんが炭水化物抜きダイエットで10㎏減量に成功して」
黙ったまま、運転する父親の傍ら。
相変わらず、母親のマシンガントークは健在で。
「ふーん」
後ろ席に座り。
形ばかり相槌なんて打ちながらも。
それより、はるかに。
窓越しに見える景色のほうが、気になって仕方なく…
半年ぶりに眺める外の世界は。
街行く人も、店のショーウィンドーも。点滅する青信号さえも。
何もかもがまぶしくて。
そして、ようやく。
実感がわいてきたんだ。
やっと、戻って来た。
苦しかったこと、悔しかったこと。
いろいろあったけど。
今となっては、もう。
すべてが過去の出来事で。
これからは、ちゃんと生きていこう。
勉強して、大検も取って。真面目に働いて…
今度こそ、新しく。
人生をやり直すんだ。
彼女と一緒に。
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