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『…ははっ。杏も大変だな。やっぱりメイド喫茶のお客さんってそんなんなんだな。』
「…………。」正直私の心の中は言葉を失っていた。
和成が本心で言っているのかが理解できなかった。
嫌、本当はわかっている。
でもただそれを信じたくはなかったんだ。
私は最後の願いを込めて和成の本心を確かめた。
『和成…妬いてない…よね?』
和成はちらっと横目で私を見ながら口を開いた。
『え!?妬く?…俺が!?なんで!?』
「…だよね。」私にはもうその言葉しか出てこなかった。
きっと和成には何をいってももうダメなんだろう。
そう思った瞬間私の中での和成への気持ちがどんどん冷めて行くのを感じた。
私はこの話題をもう続けられないと思い、話を終わらせていく。
『あはは。そう…そうだよね!!まぁ大体妻子持ちの人だし大丈夫なのに考えすぎだよね~。夢にもその辺のことがあるから安心しろっていわれてたのに馬鹿だよねー』
私は自分でもわざとらしいなと思うくらい明るく振る舞いながら笑混じりに言葉を紡ぐ。
『おう。まぁ気にすんなよ!!』
和成はきっと励ましてるつもり。
そんなのは私だってわかってる。
でももう無理なんだよ。
1度何処かでプツリと糸が切れると私は脆かった。
そう。
元彼がそんなんだった。
高校生3年間ずっと一緒にいた彼。
高校卒業後は同居したいと望むくらい好きだった。
でもそれを親は許してくれなかった。
それは仕方のないことだと思う。
そして私は独り暮らし、彼は実家から。
少し距離のある私たちだったけど月に1回はお泊まりをしていた。
でも彼はだんだん離れていった。
その時の私の職場は休みのない飲食業。
ただでさえ仕事が辛くてやっともらえた休み。
彼と会いたかった。
約束してる日が待ち遠しかった。
彼は約束を守らなくなった。
新しい専門学校が始まって新しい仲間に囲まれてそちらの付き合いを優先し始めたんだ。
私も最初は頑張ろうと思った。
でも1回覚めた気持ちはなかなか戻らない。
その上、私も仕事が変わり今の和成と知り合ってしまった。
私は今のこの状況と前の状況が類似していると感じながらも和成の話にてきとうに相槌をうった。
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