6人が本棚に入れています
本棚に追加
私はそつなく話をもとに戻す。
自分自身が声優という夢を目指していくなかで経験者のお話は凄くためになる。
特に自分自身10000人に1人くらいしかなれないと言われているこの職業。
将来なれなかったときの不安が無いわけでもない。
だからこそ諦めも肝心だとは思っているのだが、諦められないのも事実で、黒兎さんは果たしてどうしたのかがとても気になっていた。
『俺は卒業後は一応この辺のプロダクションに入って少しの間活動してたよ。まぁ、ただ…嫁に子供が出来て諦めざるえなくなったんだけどね。』
『……………そっか。』
何故だか胸がいたかった。
「嫁」という響きが心に突き刺さった、そんな気がした。
別に左手の薬指に付けられていた証が見えてなかった訳でもない。
黒兎さんと付き合いたいとかそんなことを思っていた訳でもない。
ただ現実を突き付けられた。
黒兎さんと私は交わることのない他人なんだって。
嫌いな人ではなかったからこそチクリと心が傷んだ。
こんな風に感じている自分に驚きながらも私は黒兎さんに怪しまれないように会話を続けていった。
カランコロン~♪
それから程なくしてお屋敷(お店)のドアの開く音と共に新しい御主人様(御客様)が来た。
『お帰りなさいませ。御主人様』
黒兎さんやバードさんの時と同様にお席に誘導し、メニューを説明する。
それからはその新しく来た御主人様(御客様)と黒兎さん、バードさんそして夢と私の5人でお話をしていった。
最新アニメやら、テレビドラマ。時には政治などのお堅い話をしていた。
そして気がつくと時刻は18時を回っていた。
黒兎さんとバードさんは次の日も勤務ということでもうお屋敷(お店)には居なかった。
私は御主人様(御客様)の人数を確認すると夢と交代で休憩をとることにした。
『じゃあお先に少し失礼します!!また混んできたら何時でも収集かけてね!!』
『うん!!とりあえず休憩の1時間は大丈夫だと思うしゆっくりしておいで!!』
夢は軽くウインクを飛ばしながら言葉をかけると、1人仕事に戻っていった。
最初のコメントを投稿しよう!